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2026年診療報酬改定のスケジュールと「地域包括医療病棟入院料」

  • 執筆者の写真: 瀧 智史
    瀧 智史
  • 6月26日
  • 読了時間: 4分



 物価高騰、人件費の上昇で先の病院経営に不安を感じる中、令和8年度診療報酬改定に向けた調査が始まっています。




 全体のスケジュールとしては図にありますように、令和7年4月のキックオフ以降、各部会から業界意見聴取や調査、議論が実施され、診療報酬調査専門組織からは提案書の募集・評価、議論が行われます。また令和7年度は2年に1回行われる「医療経営実態調査」の実施の年となり、この調査では医療機関の財務状況を調査が行われます。

 こうした各調査・議論の結果は12月頃までに公表を予定されており、その後は年末の令和8年度予算編成を経て、来年2月頃に答申を行うとされております。




地域包括医療病棟入院料



 今回の記事では「入院・外来医療等における実態調査」の地域包括医療病棟についてみていきます。


 令和6年度の診療報酬改定で地域包括医療病棟入院料は、10対1の看護配置に加えて、高齢者救急を受け入れる体制を整え、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に担う病棟として新設されました




 しかしその一方、重症度や多職種配置、その他様々なアウトカム要件のすべてを満たすことのハードルが高く、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会が2024年5月に実施した「地域包括医療病棟入院料への移行調査〈集計速報値〉n=1,002」では、「転換予定」3.9%、「検討中」14.1%、「転換しない」82.0%となりました。令和7年3月1日時点で地域包括医療病棟入院料を算定している医療機関は154件と、まだまだ移行が進んでいないのも現状です。



施設基準を満たすことが困難な項目


 今回の資料では「地域包括医療病棟入院料の届出にあたり基準を満たすことが困難な項目」について、A票対象施設にあたる「一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料、地域包括医療病棟入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料等の届出を行っている医療機関」と、B票対象施設にあたる「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料、緩和ケア病棟入院料等の届出を行っている医療機関」に分けて調査が行われました。


 A票の調査では、「常勤のPT/OT/STの配置」「当該保険医療機関の一般病棟から転棟したものの割合が5%未満」「休日を含めて、リハビリテーションを提供できる体制」と回答

た医療機関が多い結果となりました。



 しかしこれらは人員配置と院内のベッドコントロールで対応することができますが、本当に基準維持が難しいのは「当該病棟を退院又は転棟した患者(死亡退院及び終末期のがん患者を除く。)のうち、退院又 は転棟時におけるADL(基本的日常生活活動度(Barthel Index)の合計点数をいう。)が入院時と比較して低下した患者の割合が5%未満であること」の項目でしょう。高齢の患者は入院中にADLが低下する場合が多いことや、手術予定患者は術後ADLが低下する場合が多いと言われているため、入院前から患者の状態を把握し緻密なベッドコントロールを行うことが重要となります。また、上流病院からのADL改善前の早期の受入れや、多職種による入院早期の栄養管理や運動療法を行い院内連携を図ることも必要な取組みでしょう。



 またB票の調査では「重症度、医療・看護必要度の基準①を満たすこと」「在宅復帰率8割以上」「転棟患者5%未満」「休日を含めて、リハビリテーションを提供できる体制」と回答した医療機関が多い結果となりました。




 地域包括医療病棟入院料と地域包括ケア病棟入院料はどちらもこれから増大する高齢者の医療を担う機能ですが、施設基準を比較すると在院日数に大きな差があり、地域包括医療病棟入院料は平均在院日数21日に対して、地域包括ケア病棟入院料は60日上限となっています。このことから地域包括医療病棟では早期の退院が可能で、かつADLが下がらず在宅復帰ができる、尿路感染症や肺炎等の軽症の高齢者の受皿としての機能が求められていることがわかります。反対に地域包括ケア病棟では入院が長期化しやすい後期高齢者や社会的入院の受皿としての機能が求められていると言えるでしょう。

 病院経営を行っていくためには今後の診療報酬の動向を読み取り、自院の方向性を定めることが重要であり、そのためには自院の患者構成と現在算定している入院料、診療報酬の動向を照らし合わせて見直し、求められている機能へ対応していくことが必要です。


 
 
 

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