- 6月4日
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厚生労働省のデータによると、2018年と2023年の100床あたりの事業収益を比較すると約1億5,700万円の増加が見られました。しかし同期間における物価や水道光熱費の高騰、人件費の上昇などにより、事業費用はそれを上回る約2億1,900万円増加しています。その結果、事業利益は約マイナス6,200万円となり収益構造の厳しさが浮き彫りとなっています。

また2020年以降、消費者物価指数は上昇傾向にあり、2024年には106.3%となっています。一方、診療報酬本体指数2024年で101.31%にとどまっており、物価上昇に対して診療報酬の増加が追いついていない状況が見て取れます。

こうした病院経営の厳しい状況を受け、診療報酬の引き上げを求める声が各方面から上がっていますが、2026年度の改定でどのような対応がなされるのか、先行きは依然として不透明です。
日本商工会議所が2024年5月に行った中小企業における賃上げ状況の実態調査では、業種別の『賞与・一時金』の増減について前年と比較をした場合、「医療・介護・看護職」では「昨年度を上回る水準で支給」と回答した割合が3割となり、ベースアップ評価料や処遇改善加算の影響がでていることが分かります。

その一方賃上げ額では「医療・介護・看護職」は加重平均で5,477円、賃上げ率2.19%と他業種と比較し最も低い賃上げ率となっています。

約5割の病院で赤字経営となっている状況からしても、今の診療報酬の構造では他業種のような昇給を行うことは厳しいといえるでしょう。
2024年度の診療報酬改定で新設された「ベースアップ評価料」は、2025年3月時点での病院の届出率は86.0%と高まってはいるものの、有床診療所では39.6%、無床診療所では30.1%となっており、病院と診療所で大きく差が開いています。

他業種では価格を自由に調整することができますが、病院では診療報酬の中で経営を行うしかない状況で、今の世の中の昇給ペースに病院が足並みを揃えることは不可能と言えるでしょう。人件費の急騰や紹介手数料の負担軽減のためにも、ベースアップ評価料の届出を行い、それを人件費に充てることは今後の経営において今打てる最低限の取組みと言えます。
今回のまとめ
① 自院の病床機能にあった適切な稼働率維持する。
② 維持するための取り組みを継続する。(営業活動と活動のモニタリング)
③ 自院の機能・規模に合った適正人員を把握する。
④ ベースアップ評価料を活用し人件費に充てる。
このような厳しい経営状況の中で今病院ができることは、まずは①~④をしっかりと行うことでしょう。
併せて今後の診療報酬改定の動向に注目が必要です。