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  • 14 分前
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 病院の約半数は赤字経営という苦しい状況の中で、医療法人を解散しなければならない状況に直面する可能性もあるかと思います。もしその様な状況に陥った場合に手続きの全体像を把握するためにも、『解散にはどのような手続きが必要となるのか』、『破産と清算の違い』など基本的な知識について記載していきたいと思います。




医療法人の解散・清算・破産とは


 医療法人の解散とはその法人格の消滅を生じさせる原因となる事由のことをいいます。

また清算とは債務を弁済し、残余財産がない状態にすることを言い、破産債務を弁済できない場合に財産法に基づいた破産手続きを行います。


医療法人の解散事由としては以下の場合があります。



解散の手続き


医療法人が解散する場合、解散の事由ごとに手続きが異なります。



 解散の事由によりその後の手続きに違いがありますが、債務超過を起こしていない場合は基本的には解散の認可申請を経て清算を行い清算結了をもって医療法人が解散する流れとなります。清算を行うためには清算人をたてる必要があり、原則当該法人の理事長が清算人となります。

 反対に、債務超過が発生している場合は破産手続きとなります。破産の場合は「破産法」により手続きを行うため、清算人をたてる必要はなく破産管財人が清算を行います。




医療機関が破産をする場合に気を付けること


①     入院患者の退院調整

②     レセプト債権の担保設定状況の把握

③     診療記録の管理


 一般的な会社の場合は破産申立書を提出した段階で、従業員の解雇等を行いますが、病院では入院患者がいる場合があります。その際はまずは退院調整や近隣医療機関との調整を進め、患者さんの受け入れ先を確保することが必要です。また必要最低限の医療従事者、病院の保守管理者、診療報酬の計算を行う事務職員等を確保し患者さんがいなくなるまでしっかりと対応する必要があります。

 破産に至るということは多額の債務を負っていることが多いかと思いますが、その際にファクタリング等によりレセプトが担保となっている場合が少なからずあります。レセプトを担保としている場合は、契約によっては破産の手続きを開始した時点で以降の診療報酬収入がストップし資金繰りに大きく影響しますので、担保設定状況の把握をしておくことは必須です。

 については医師法で診療録の5年保管が義務付けられており、また血液製剤記録がある場合は20年の保管が義務付けられています。診療録の開示が求められた場合どのように対応するのかを予め検討しておくことが必要でしょう。



今できること・・


 2024年の倒産件数は過去最多の64件と言われています。診療報酬改定では様々な議論がされておりますが、人口減少が進む中病院経営は更に厳しい状況になることが予想されます。破産という状況にならないためにもスピード感をもって地域に求められる機能を実施することが必要です。

 そのためには周辺医療機関の機能の把握、診療報酬で求められている機能、自院の状況の把握を行い、目指すべき形を明示し、スタッフとともに同じ方向を目指すことが必要でしょう。



 物価高騰、人件費の上昇で先の病院経営に不安を感じる中、令和8年度診療報酬改定に向けた調査が始まっています。




 全体のスケジュールとしては図にありますように、令和7年4月のキックオフ以降、各部会から業界意見聴取や調査、議論が実施され、診療報酬調査専門組織からは提案書の募集・評価、議論が行われます。また令和7年度は2年に1回行われる「医療経営実態調査」の実施の年となり、この調査では医療機関の財務状況を調査が行われます。

 こうした各調査・議論の結果は12月頃までに公表を予定されており、その後は年末の令和8年度予算編成を経て、来年2月頃に答申を行うとされております。




地域包括医療病棟入院料



 今回の記事では「入院・外来医療等における実態調査」の地域包括医療病棟についてみていきます。


 令和6年度の診療報酬改定で地域包括医療病棟入院料は、10対1の看護配置に加えて、高齢者救急を受け入れる体制を整え、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に担う病棟として新設されました




 しかしその一方、重症度や多職種配置、その他様々なアウトカム要件のすべてを満たすことのハードルが高く、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会が2024年5月に実施した「地域包括医療病棟入院料への移行調査〈集計速報値〉n=1,002」では、「転換予定」3.9%、「検討中」14.1%、「転換しない」82.0%となりました。令和7年3月1日時点で地域包括医療病棟入院料を算定している医療機関は154件と、まだまだ移行が進んでいないのも現状です。



施設基準を満たすことが困難な項目


 今回の資料では「地域包括医療病棟入院料の届出にあたり基準を満たすことが困難な項目」について、A票対象施設にあたる「一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料、地域包括医療病棟入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料等の届出を行っている医療機関」と、B票対象施設にあたる「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料、緩和ケア病棟入院料等の届出を行っている医療機関」に分けて調査が行われました。


 A票の調査では、「常勤のPT/OT/STの配置」「当該保険医療機関の一般病棟から転棟したものの割合が5%未満」「休日を含めて、リハビリテーションを提供できる体制」と回答

た医療機関が多い結果となりました。



 しかしこれらは人員配置と院内のベッドコントロールで対応することができますが、本当に基準維持が難しいのは「当該病棟を退院又は転棟した患者(死亡退院及び終末期のがん患者を除く。)のうち、退院又 は転棟時におけるADL(基本的日常生活活動度(Barthel Index)の合計点数をいう。)が入院時と比較して低下した患者の割合が5%未満であること」の項目でしょう。高齢の患者は入院中にADLが低下する場合が多いことや、手術予定患者は術後ADLが低下する場合が多いと言われているため、入院前から患者の状態を把握し緻密なベッドコントロールを行うことが重要となります。また、上流病院からのADL改善前の早期の受入れや、多職種による入院早期の栄養管理や運動療法を行い院内連携を図ることも必要な取組みでしょう。



 またB票の調査では「重症度、医療・看護必要度の基準①を満たすこと」「在宅復帰率8割以上」「転棟患者5%未満」「休日を含めて、リハビリテーションを提供できる体制」と回答した医療機関が多い結果となりました。




 地域包括医療病棟入院料と地域包括ケア病棟入院料はどちらもこれから増大する高齢者の医療を担う機能ですが、施設基準を比較すると在院日数に大きな差があり、地域包括医療病棟入院料は平均在院日数21日に対して、地域包括ケア病棟入院料は60日上限となっています。このことから地域包括医療病棟では早期の退院が可能で、かつADLが下がらず在宅復帰ができる、尿路感染症や肺炎等の軽症の高齢者の受皿としての機能が求められていることがわかります。反対に地域包括ケア病棟では入院が長期化しやすい後期高齢者や社会的入院の受皿としての機能が求められていると言えるでしょう。

 病院経営を行っていくためには今後の診療報酬の動向を読み取り、自院の方向性を定めることが重要であり、そのためには自院の患者構成と現在算定している入院料、診療報酬の動向を照らし合わせて見直し、求められている機能へ対応していくことが必要です。



 厚生労働省のデータによると、2018年と2023年の100床あたりの事業収益を比較すると約1億5,700万円の増加が見られました。しかし同期間における物価や水道光熱費の高騰、人件費の上昇などにより、事業費用はそれを上回る約2億1,900万円増加しています。その結果、事業利益は約マイナス6,200万円となり収益構造の厳しさが浮き彫りとなっています。




 また2020年以降、消費者物価指数は上昇傾向にあり、2024年には106.3%となっています。​一方、診療報酬本体指数2024年で101.31%にとどまっており、物価上昇に対して診療報酬の増加が追いついていない状況が見て取れます。




 こうした病院経営の厳しい状況を受け、診療報酬の引き上げを求める声が各方面から上がっていますが、2026年度の改定でどのような対応がなされるのか、先行きは依然として不透明です。




 日本商工会議所が2024年5月に行った中小企業における賃上げ状況の実態調査では、業種別の『賞与・一時金』の増減について前年と比較をした場合、「医療・介護・看護職」では「昨年度を上回る水準で支給」と回答した割合が3割となり、ベースアップ評価料や処遇改善加算の影響がでていることが分かります。



 その一方賃上げ額では「医療・介護・看護職」は加重平均で5,477円、賃上げ率2.19%と他業種と比較し最も低い賃上げ率となっています。



 約5割の病院で赤字経営となっている状況からしても、今の診療報酬の構造では他業種のような昇給を行うことは厳しいといえるでしょう。





 2024年度の診療報酬改定で新設された「ベースアップ評価料」は、2025年3月時点での病院の届出率は86.0%と高まってはいるものの、有床診療所では39.6%、無床診療所では30.1%となっており、病院と診療所で大きく差が開いています。



 他業種では価格を自由に調整することができますが、病院では診療報酬の中で経営を行うしかない状況で、今の世の中の昇給ペースに病院が足並みを揃えることは不可能と言えるでしょう。人件費の急騰や紹介手数料の負担軽減のためにも、ベースアップ評価料の届出を行い、それを人件費に充てることは今後の経営において今打てる最低限の取組みと言えます。



今回のまとめ

①     自院の病床機能にあった適切な稼働率維持する。

②     維持するための取り組みを継続する。(営業活動と活動のモニタリング)

③     自院の機能・規模に合った適正人員を把握する。

④     ベースアップ評価料を活用し人件費に充てる。


このような厳しい経営状況の中で今病院ができることは、まずは①~④をしっかりと行うことでしょう。




併せて今後の診療報酬改定の動向に注目が必要です。

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