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― 令和8年度診療報酬改定のポイント整理 ―




改定の本質は

「どのような患者を受ける病棟なのか」の明確化


 令和8年度診療報酬改定において、地域包括医療病棟入院料は大きく見直されました。今回の改定は点数の変更にとどまらず、病棟の役割や求められる機能をより明確にした点に特徴があります。

 これまで曖昧であった「どのような患者を受ける病棟なのか」という点について、制度として明確な方向性が示されました。改定で何が変わり、どこが重要なポイントなのかを整理します。




高齢者の中等症救急を担う病棟としての明確化


 今回の改定で最も重要な変化は、地域包括医療病棟の役割が明確に定義されたことです。

制度として想定されているのは、誤嚥性肺炎や尿路感染症、心不全増悪、脱水などの中等症の高齢患者です。これらの患者は入院が必要である一方、高度急性期医療までは必要としないという特徴があります。

 従来はこうした患者の受け皿が明確ではなく、急性期病棟とそれ以外の病棟の間で役割が分散していました。今回の改定では、この層を地域包括医療病棟が担うことが明確に打ち出されています。



入院料の細分化と点数設計の意図


 改定前は1区分のみであった地域包括医療病棟入院料は、今回の改定で大きく構造が変わりました。

 まず、医療機関の体制に応じて「入院料1」と「入院料2」に分けられています。一般病棟入院基本料を持たない医療機関が入院料1となり、持つ医療機関は入院料2となります。特徴的なのは、入院料1の方が高く評価されている点です。さらに、それぞれの入院料は患者の入院形態によって三つに区分されます。緊急入院で手術を伴わない患者が最も高く評価され、予定入院で手術を行う患者は相対的に低い評価となり、点数は概ね3,000点台前半から3,300点台に設定されております。構造としては救急患者ほど高く評価される設計になっており、これは制度として、救急受入機能を重視していることを示しています。



看護配置・看護必要度の引上げ


 施設基準の面でも大きな見直しが行われています。まず、看護配置は10対1が求められます。これは急性期に近い水準であり、一定の医療密度が必要であることを示しています。

さらに重要なのが、重症度・医療・看護必要度の基準です。今回の改定ではこの基準が引き上げられ、例えば必要度Ⅰは約16%から約19%へと見直されました。

この変更は、より医療必要度の高い患者を受け入れることを求めるという明確なメッセージです。単に病床を埋めるのではなく、一定の医療負荷を持つ患者を継続的に受け入れて、在宅や自宅に帰すことが前提となります。



多職種体制の必須化


 地域包括医療病棟では、単に治療を行うだけでは不十分とされています。

 今回の改定でも、リハビリテーション、栄養管理、口腔管理といった多職種の関与が前提として位置づけられています。これらは入院後早期から介入することが求められており、高齢患者が入院によって身体機能を低下させやすいという特性を踏まえたものです。

 単なる急性期治療ではなく、生活機能を維持する医療が同時に求められていることを意味します。



患者構成の明確化(85歳以上割合)


 今回の改定では、患者構成にも明確な要件が設定されました。その代表が、85歳以上の患者が一定割合以上であることです。この要件は、地域包括医療病棟が本来担うべき対象を限定する役割を持っています。

 若年患者や軽症患者に偏ることを防ぎ、高齢者医療に特化した病棟であることを担保するという意図が込められています。



ADL低下割合の評価


 もう一つ重要な指標が、ADL低下割合です。高齢患者は入院によって身体機能が低下しやすいため、単に治療を行うだけでは十分とは言えません。制度としては、どれだけ機能低下を防げたかが評価されます。このため、リハビリテーションや栄養、口腔ケアを早期から介入させる体制が不可欠となります。

 地域包括医療病棟では、「治療」と「機能維持」を同時に実現することが求められています。



平均在院日数の考え方


 平均在院日数についても重要な視点として、短すぎる場合は軽症患者に偏っている可能性があり、長すぎる場合は回復期的な運用になっている可能性があるということです。

 制度として求められているのは、急性期と回復期の中間に位置する滞在期間です。実際には、おおよそ2~3週間程度の入院が想定されています。




今回の改定のポイントまとめ


今回の地域包括医療病棟入院料の見直しは、以下の点に集約されます。


●対象患者が明確化され、高齢者の中等症救急を担う病棟としての位置づけが強化された。

●入院料の細分化により、救急患者を受けるほど評価が高くなる構造となった。

●看護必要の基準が引き上げられ、一定の医療密度が求められるようになった。

●85歳以上の割合やADL低下割合などにより、患者構成と医療の質の両面が評価される仕組みとなった。


 地域包括医療病棟入院料は、今回の診療報酬改定により高齢者救急を担うための病棟として制度的に完成度が高められたと言えます。単に入院を受けるだけではなく、一定の医療負荷を持つ患者を受け入れ、早期から多職種で関わり、機能低下を防ぎながら回復させることが求められています。

 今回の改定を理解するうえで重要なのは、点数ではなく「どのような医療を求められているか」を読み取ることです。

 地域包括医療病棟は、その役割がこれまで以上に明確になった病棟であると言えるでしょう。

― 令和8年度診療報酬改定が示した「病院単位の急性期評価」―



今回の改定の本質は

 「病棟」ではなく「病院」を見ること


 令和8年度診療報酬改定で、急性期入院医療の評価は大きく考え方が変わりました。今回新設された急性期病院A一般入院料・急性期病院B一般入院料はその象徴であり、これまでの急性期一般入院料は、基本的に病棟単位で急性期機能を評価する仕組みでしたが、今回の改定では、地域の中でその病院が実際にどれだけ救急搬送を受け、どれだけ全身麻酔の手術を担っているかという病院全体の機能に着目した評価が新たに導入されました。

 この改定は単なる新点数の追加ではありません。制度として、「急性期らしい患者が入っている病棟」だけを評価するのではなく、「地域で急性期病院として実際に機能している病院」を評価する方向へ踏み込んだものです。急性期病院B一般入院料は、まさにその新しい評価軸の中核に置かれています。





急性期病院B一般入院料はどのような病院を想定しているのか


 急性期病院B一般入院料は、急性期病院A一般入院料ほどの集積性まではないものの、地域で確実に急性期機能を担っている病院を評価するために新設されました。点数は1,643点です。急性期病院A一般入院料が1,930点であるのに対し、Bは10対1看護配置を前提とした評価であり、Aよりは一段階低いものの、従来の10対1の急性期一般入院料とは異なる考え方で位置づけられています。

 制度上、Bは「病院全体で急性期機能を担うが、Aほどの超高集積病院ではない層」を想定しています。つまり、高度急性期の拠点まではいかないものの、地域の救急搬送や手術を現実に支えている病院となります。

 今回の改定でこの層を独立して評価したことには、急性期一般入院料1〜6のように病棟の患者像だけを見るのではなく、その病院が地域でどの程度急性期医療の受け皿になっているかを制度として見るという大きな意味があります。



新設の背景にあるのは「急性期機能の実態」と「地域での役割」


 急性期病院一般入院基本料の新設について、救急搬送受入れや全身麻酔手術等の急性期機能に応じた評価と説明されています。これは裏を返せば、従来の評価体系では、急性期病院として地域に大きな役割を果たしていても、それが必ずしも十分に評価されていなかったという問題意識があったということです。

 特に地方や中規模病院では、7対1病棟ほどの厚い看護配置ではなくても、救急搬送や全身麻酔手術を相当数担っている病院があります。そうした病院を、単に10対1病棟として評価するだけでは、その実態に見合った評価にならない。今回の急性期病院B一般入院料の新設は、そうした現場の実態を反映したものと理解した方が分かりやすいと思います。



施設基準のポイントは「救急搬送」と「急性期の実績」


 急性期病院B一般入院料の考え方を理解するうえで、もっとも重要なのは施設基準です。BはAのように「救急搬送2,000件以上かつ全身麻酔手術1,200件以上」という高集積型ではありませんが、病院全体として一定の急性期実績を持つことが求められます。Bは次のいずれかを満たす病院として示されています。

 ・救急搬送1,500件以上

 ・救急搬送500件以上かつ全身麻酔手術500件以上

 ・人口20万人未満地域の最大救急搬送病院(救急搬送1,000件以上)

 ・離島地域の最大救急搬送病院

 また、施設基準では、救急搬送件数のうち夜間時間帯(22時から翌朝8時まで)に受け入れた救急搬送件数が1割以上であることも示されており、単に件数だけではなく、時間外を含めた実働性も見られていることが分かります。つまり急性期病院B一般入院料は、昼間だけ予定入院を回している病院ではなく、地域の救急を現実に受け止めている病院に向けた入院料として捉えることができます。



看護配置は10対1だが、評価の考え方は従来の10対1とは違う


 急性期病院B一般入院料の看護配置は10対1です。この点だけを見ると、従来の急性期一般入院料4〜6と同じ10対1に見えるかもしれませんが、制度の意味はまったく同じではありません。急性期一般入院料4〜6は、あくまで病棟単位の患者割合や必要度で評価される仕組みですが、一方で急性期病院B一般入院料は、病院全体の急性期機能を前提に、そのうえで10対1の病棟を評価する仕組みです。

 この違いは非常に大きく、同じ10対1であっても、急性期病院B一般入院料は救急・手術実績を持つ病院の10対1病棟として評価されるということです。今回の改定は、看護配置の数字だけで急性期を語る時代ではなくなったことを示しています。



重症度、医療・看護必要度は「割合」から「割合指数」へ変わった


 今回の改定では一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の考え方も見直されました。ここで重要なのは、基準該当患者割合を単純にみるのではなく、該当患者割合に救急搬送応需係数を加えた「割合指数」で評価する考え方に変わったことです。

 急性期病院A・B、急性期一般入院料1、看護・多職種協働加算では、必要度Ⅰで割合①28%・割合②35%、必要度Ⅱで割合①27%・割合②34%という基準が示されています。つまり、形式的な必要度の該当患者割合だけでなく、どれだけ救急搬送を受けているかを指数に反映することで、本当に急性期らしい病院を評価する仕組みへ変えたことがわかります。



「救急搬送応需係数」の導入が意味すること


 この救急搬送応需係数は、病床当たり年間救急搬送受入件数に基づいて係数が算出され、該当患者割合に加算するとされています。これは、手術件数や診療密度だけでなく、地域の救急をどれだけ断らず受けているかを急性期評価の中にきちんと埋め込んだことを意味します。

 急性期病院B一般入院料は、まさにこの考え方と相性のよい入院料と考えられます。「高度急性期ではないが、地域の急性期医療を着実に支えている病院」を評価するには、単純な患者割合や看護配置だけでは不十分で、救急受入実績を見なければならないことを制度化した見直しと言えるでしょう。



看護・多職種協働加算の新設が示す新しい急性期像


 急性期病院B一般入院料でもう一つ外せないのが看護・多職種協働加算2(255点)です。今回の改定では、高齢者等が主に入棟する病棟において、ADLの維持・向上等に係る取組を進めるため、看護職員を含む多職種が協働して専門的な指導や診療の補助を行う体制を評価する加算が新設されました。急性期病院B一般入院料ではこの加算2が1日255点、急性期一般入院料4では加算1が1日277点です。

 ここで重要なのは、急性期病院B一般入院料は救急を受ける病院の評価ですが、同時に、高齢患者のADL維持・向上まで含めた急性期病棟運営が求められているという点です。つまり救急を受けて終わりではなく、その後の早期離床、早期退院、多職種協働を含めて急性期機能とみなす考え方であり、今回の改定で急性期医療の中に「生活機能」の視点が入り込んできたことは、かなり大きな変化です。




急性期病院B一般入院料は

 「地域急性期の本体」を評価する入院料


 今回の急性期病院B一般入院料の新設は、これまでのように病棟単位の患者割合だけで急性期を測るのではなく、救急搬送、全身麻酔手術、夜間受入、必要度、そして多職種協働まで含めて、病院全体として地域急性期を担っているかどうかを見る制度になったという点で、急性期入院医療の評価軸を大きく変えました。

 急性期病院B一般入院料は、高度急性期の最上位病院を評価するAほどではないものの、地域で急性期医療を現実に支えている中核病院にとって、非常に重要な新設入院料です。そして、急性期一般入院料4との関係で見れば、今回の改定は10対1を再編し、“病院単位の急性期機能”を明確に評価する時代に入ったことを示しています。今後この入院料を理解するうえで「この病院は地域の急性期医療を本体として担っているのか」という視点が大切となります。


 「包括期の入院医療を担う医療機関の役割として、救急搬送の受入と在宅・施設等の後方支援という観点が示されており、これらを評価する指標を検討するとともに、各医療機関の役割を踏まえながら、適切な基準について検討を進める。」

 令和7年9月11日に開催された入院外来医療等の調査・評価分科会において今後の検討の方向性として上記の内容が挙げられております。




 現状、地域包括医療病棟入院料と地域包括ケア病棟入院料における「救急搬送の受入」と「在宅・施設等の後方支援」に関連する既存の施設基準は、地域包括医療病棟入院料では「救急搬送件数15%以上」、地域包括ケア病棟入院料では「自宅等からの入院が2割以上」、「自宅等からの緊急入院が9件以上」があります。(ここでいう自宅等とは、自宅、介護医療院、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、認知症対応型グループホーム、有料老人ホーム等を指します。)





 今回の取りまとめにおいて挙げられた「救急受入れや後方支援に関する現状の評価」としての加算項目は、「在宅患者緊急入院診療加算」、「在宅患者支援病床初期加算」、「協力対象施設入所者入院加算」、「介護保険施設等連携往診加算」となっており、このうち「協力対象施設入所者入院加算」「介護保険施設等連携往診加算」については令和6年診療報酬改定で新設された項目となっております。





 後方支援に係る加算である、「在宅患者緊急入院診療加算」と「協力対象施設入所者入院加算」の算定状況は、いずれの入院料においても算定件数が0件の施設が最も多い結果となり、算定している医療機関の中では約3割が算定件数が多く、残りの7割は数件の算定といった2極化した結果となりました。






 また、新設された介護保険施設等連携往診加算についての報告では、届出施設数自体が少ないかつ、届け出届出をしていても算定実績の無い医療機関が多くあることに注目されており、次の改定では届出や算定回数を増やすなんらかの改定がなされることも考えられます。

 介護保険施設等連携往診加算は当該保険医療機関と「特別な関係」の施設においては算定ができない要件となっているため、現在保険医療機関が連携している多くの介護施設は、自法人等の「特別な関係」にあたる場合が多いと考えられます。





 更に、包括期の病院機能を表現できる指標の候補として「救急搬送受入件数」「下り搬送等受入件数」「当該病棟への緊急入院」「後方支援に係る加算の算定件数」「自宅等からの入院件数」「協力対象施設である介護施設への往診」が挙げられており、具体的な指標やデータ取得の実現性まで議論されています。次期改定ではこれらの項目について、新たな基準が設けられる等の対応がなされる可能性があります。





 前回の診療報酬改定において医療機関と介護施設の連携がより一層求められるようになり、関係する加算の増点や、新たな加算の新設、入院料への要件化等が進められています。

新たな地域医療構想においても各病棟機能の役割の明確化が進められており、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟では救急受入や後方支援の役割が求められています。

 令和8年度診療報酬改定においても医療介護連携を始めとし、救急受入や後方支援に係るなんらかの改定が行われると予想されますので、今後の議論に注目していきましょう。

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